下痢便の形状と原因となる細菌・ウイルス

下痢のほかに、発熱・悪寒・激しい腹痛・嘔吐・便に血液や粘液が混じっているなどの症状がみられたら、以下のような細菌やウイルスの感染が考えられます。早めに医療機関を受診しましょう。

下痢便の形状と原因となる細菌・ウイルス

下痢になったら、まず、原因と症状を確かめましょう。思いあたる原因を探り、下痢便の状態や色を観察したり、下痢以外の症状を確認することが重要です。その原因、症状によって下痢の対処法は異なってきます。
便の色はいつもと同じで液状またはペースト状態、発熱などがない場合は、日常的に起こりがちな冷え、ストレス、食あたり、水あたり、消化不良などによる下痢が考えられます。市販の下痢止め薬の服用で対応できます。
下痢のほかに、発熱・悪寒・激しい腹痛・嘔吐・便に血液や粘液が混じっているなどの症状がみられたら、以下のような細菌やウイルスの感染が考えられます。早めに医療機関を受診しましょう。

●水様便
サルモネラ
サルモネラ(Salmonella enterica )の感染により胃腸炎をおこします。通常8〜48時間の潜伏期を経て発病。悪心および嘔吐で始まり、数時間後に腹痛および下痢を起こします。下痢は1日数回から十数回で、3〜4日持続しますが、1週間以上に及ぶこともあります。
・ボツリヌス菌
多くはボツリヌス毒素を含んだ食物を食べることで起こります。伏時間は8時間〜36時間で、吐き気、おう吐や視力障害、言語障害、えん下困難(物を飲み込みづらくなる)などの神経症状が現れるのが特徴で、重症例では呼吸麻痺により死亡します。
・ウエルシュ菌
ウエルシュ菌食中毒の潜伏時間は通常6〜18時間、平均10時間で、喫食後24時間以降に発病することはほとんどありません。主要症状は腹痛と下痢です。下痢の回数は1日1〜3回程度のものが多く、主に水様便と軟便です。腹部膨満感が生じることもありますが、嘔吐や発熱などの症状はきわめて少なく、症状は一般的に軽くて1〜2日で回復します。
・コクサッキーウイルス
熱性疾患、上気道、髄膜炎、ヘルパンギーナ、手足口病、発疹症、胃腸炎など、感染・流行像は多彩です。
・インフルエンザウイルス
高熱、頭痛、腰痛、筋肉痛、関節痛などの全身症状や全身倦怠感などを呈し、その後すぐに鼻汁、咽頭痛、咳などの呼吸症状があらわれます。また、下痢、腹痛などの消化器症状がみられることもあります。
・アデノウイルス
主に呼吸器(上気道・下気道)、眼、消化器などの粘膜およびリンパ組織がおかされます。
・ノロウイルス
潜伏期間は24時間から48時間で、主な症状は嘔吐、下痢(水溶性下痢)、腹痛、発熱(38度以下)、頭痛など、風邪によく似た症状の急性胃腸炎症状を呈します。一般的には2〜3日で回復し、経過は比較的良好ですが、症状回復後通常1〜2週間まれに1ヶ月に渡り糞便中にウイルスを排出し続けます。

●血便を伴う水様便
・細胞侵入性大腸菌(EIEC) 下痢原性大腸菌感染症を参照
主な症状は下痢、発熱、腹痛ですが、重症例では赤痢様の血便または粘血便、しぶり腹などがみられ、臨床的に赤痢と区別するのは困難です。潜伏期間は一定しませんが、通常12 〜48時間です。
赤痢アメーバ
潜伏期は2〜3週とされますが、数ヶ月〜数年におよぶこともあります。赤痢アメ−バ性大腸炎は粘血便、下痢、テネスムス(便意があるが排便がない)、排便時の下腹部痛などが主症状です。肝膿瘍などの合併症を伴わない限り、発熱を見ることはまれ。下痢による発症は一般に緩除であり、その程度も粘血を混じた2〜3回/日程度のものから、テネスムスを伴い1日に20回以上の粘血便を示すものまで多彩です。
腸炎ビブリオ
原因食品はほとんどが魚介類です。8月を発生のピークとして、7〜9月に多発する細菌性食中毒の主要原因菌の一つ。潜伏期間は12時間前後で、主症状としては堪え難い腹痛と、水様性や粘液性の下痢があり、まれに血便がみられることもあります。
カンピロバクター
症状は下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などで、他の感染型細菌性食中毒と酷似しますが、潜伏期間が一般に2〜5日間とやや長いことが特徴です。
・赤痢菌
潜伏時間は1〜5日(多くは3日以内)で、症状は大腸炎(粘膜の出血性化膿炎)、発熱、下痢、おう吐、腹痛を伴うしぶり腹、膿・粘血便等です。
・腸管出血性大腸菌(EHEC)下痢原性大腸菌感染症を参照。
EHECによる出血性大腸炎は、血便と激しい腹痛を伴います。激症の場合下痢は鮮血便状です。小児はベロ毒素により溶血性尿毒症症候群(HUS)が続発し、場合によっては死に至ります。

●粘液・血便を伴う水様便
・腸チフス、パラチフス
腸チフスとパラチフスの臨床症状はほとんど同じですが、パラチフスは腸チフスに比較して一般的に症状は軽い。通常10〜14 日の潜伏期の後に発熱で発症する。3主徴(比較的徐脈、バラ疹、脾腫)、下痢または便秘を呈する。重症な場合には意識障害も引き起こします。
・ブドウ球菌
悪寒戦慄を伴う38〜40℃の間欠熱、10〜20回/日に及ぶ頻回の激しい下痢と腹痛。便の性状は剥離脱落した粘液と膿汁および粘液による薄い緑色の水様便や白色の水様便。
・クロストリジウム・デフィシル菌
この菌が産生する外毒素により大腸に黄白色〜黄緑色の斑状の偽膜が形成されて引き起こされる大腸炎です。水様性下痢(時に血性下痢)、腹痛、発熱(38℃以上)、悪心、嘔吐などの症状があります。

●米のとぎ汁様
・Klebsiella oxytoca
薬剤、特に広域ペニシリンの投与後に出現し、腸管感染症を引き起こします。症状は、頻回の血便と激しい腹痛です。原因となる抗生物質の投与中止及び輸液、電解質補正を行います。
・毒素原性大腸菌(ETEC) 下痢原性大腸菌感染症を参照
ETEC感染症の主症状は下痢で、多くの場合腹痛を伴います。発熱はほとんどの場合認められず、便の性状は典型的な場合コレラと同じように、米のとぎ汁様ですが、通常は水様便ないし軟便の場合が多い。
・コレラ菌
潜伏期間1〜5日で、激しい水溶性下痢と嘔吐があり、急速に脱水状態になります。便は米のとぎ汁様。治療の基本は輸液で下痢機関短縮の効果があります。
粘液便
・病原大腸菌(EPEC)下痢原性大腸菌感染症を参照
EPEC感染症の症状は、サルモネラ症に類似していて、下痢・腹痛・悪心・嘔吐・発熱が主症状です。便性状は、粘液便ないし粘血便を認めます。

●白色便
ロタウイルス
冬季に多発。特に乳幼児に多く発生し、白色便性下痢(血便や消化不良を示す緑色便がみられる場合もあり)を認めます。48時間の潜伏期間をもち、腹痛、嘔吐、発熱などに続いて下痢を起こします。

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