胃腸炎をおこすヒトアデノウイルス

ヒトに胃腸炎を起こすウイルスはヒトアデノウイルスFで、この中に血清型40と41が属しています。これらは腸管アデノウイルスとも呼ばれます。ヒトアデノウイルスFによる胃腸炎には季節性がみられません。

胃腸炎をおこすヒトアデノウイルス

アデノウイルスは、直径70〜80nmのエンベロープを持たない正20面体構造をした2本鎖DNAウイルスです。A〜Fまでの種(以前は群と呼称)に分かれ51種類の血清型が知られており、咽頭炎、扁桃炎、肺炎などの呼吸器疾患、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎などの眼 疾患、胃腸炎などの消化器疾患、出血性膀胱炎などの泌尿器疾患から、肝炎、膵炎から脳炎にいたるまで、多彩な臨床症状を引き起こします。また、アデノウイルスは、ライノウイルス等とともに、「風邪症候群」を起こす主要病原ウイルスの一つと考えられています。

ヒトに胃腸炎を起こすウイルスはヒトアデノウイルスFで、この中に血清型40と41が属しています。これらは腸管アデノウイルスとも呼ばれます。アデノウイルス感染により、腸管膜リンパ節の肥大を起こし、腸管膜リンパ節炎や腸重積症の原因となると考えられていますが、このような症例から分離されるアデノウイルスの血清型は1、2、5、6など呼吸器感染症に多くみられるヒトアデノウイルスCがほとんどであり、ヒトアデノウイルスFが検出されることはほとんどありません。
アデノウイルス性胃腸炎の潜伏期は8〜10日と他のウイルス性胃腸炎よりも長く、また下痢の持続も長いことが多いようです。感染の主要な伝播経路は糞口感染です。またヒトアデノウイルスFによる胃腸炎には季節性がみられません。
小児の重症下痢症に占める頻度は約5%であり、サポウイルス、ヒトアストロウイルスとほぼ同等です。しかし、2歳までに40%以上の小児が、アデノウイルス血清型40と41に対する中和抗体を獲得することから、多くは軽症および不顕性感染となることが推測されます。

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