ノロウイルス

カキ等貝類の生食で感染する食中毒の原因ウイルス。冬期に流行し、急性胃腸炎を起こすが、重症化はまれ。

ノロウイルス

ノロウイルス(Norovirus)は、直径27〜30nmのエンベロープをもたない正20面体対称のプラス鎖1本鎖RNAウイルスであり、カリシウイルス科に属します。ノロウイルスのゲノムの最大の特徴は、その塩基配列が非常に多様性に富むことです。ノロウイルスは培養できない為、分子疫学的解析から5つのゲノグループに分類され、このうちG1、G2およびG4という3つのゲノグループがヒトから検出され、その95%がG2であり、残りの約5%がG1です。G4は極めて稀です。G1およびG2の中には、それぞれ少なくとも15および18の遺伝子型が存在しており、世界的にG2-4(ゲノグループ2、遺伝子型4)のノロウイルスが優勢を占め、かつこの遺伝子型の中で次々と変異株が出現しています。

ノロウイルス感染症の疫学は4つの類型に分けられます。
1)は学童〜成人における急性胃腸炎の集団発生です。患者が脱水により重症化することは稀であり、発熱も38℃を超えることはほとんどありません。通常1〜3日で回復し慢性化することはない。一度に多数の患者が発生するが個々の患者をみると入院加療を必要とするような症例はほとんどありません。
2)は医療関連施設における高齢者の施設内感染で、嘔吐物の誤嚥による窒息や基礎疾患の悪化などによる死亡例が発生することがあります。このような医療関連施設でのノロウイルス胃腸炎には、流行が長引く、重症化する、平均患者数が少ない、感染の伝播はヒト−ヒト感染により食中毒によることは稀であるなど、4つの特徴があります。
3)は乳幼児期の急性胃腸炎で、入院治療を必要とする重症下痢症に占める頻度では約40%を占めるロタウイルスよりも少なく、10〜20%ですが、ロタウイルス下痢症と同様の重症例があります。
4)は成人の散発性胃腸炎です。最近の研究によれば、ノロウイルスが日常的に遭遇する成人の散発性胃腸炎の約25%の原因となっています。

ノロウイルスは、電子顕微鏡で観察される形態学的分類から、もともと小型球形ウイルス(small round structured virus-RNA detection:SRSV)と呼ばれていました。
ノロウイルスの感染源は生のカキやハマグリなど貝類であり、主な伝播経路については次のように考えられています。海水と一緒にノロウイルスが貝類の鰓(えら)に入り、中腸腺細胞で補足濃縮されます。十分な加熱処理を加えずにこれらを食べた場合に感染が成立します。カキの生食は主に冬期間に行なわれるため、ノロウイルスの食中毒は10月から4月に多発しますが、サラダやケーキが感染源とみられるものも報告されています。
ノロウイルスは、感染成立後1〜2日の潜伏期を経て腹痛、下痢、嘔吐などで発症し通常、血便はみられず、多くの場合2〜3日間のうちに比較的軽症で寛解します。

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